私は好き嫌いがない方である。世代もあるのかもしれないが、基本出されたものは何でも食べる。絶対食べられないアスパラガスを除いては。最近の子どもを見ていると、好き嫌いが多いように感じるのは私だけだろうか。添加物の多く入っている食品が多くなっているせいなのか、食物アレルギーを持つ子どもも昔よりかなり多くなって来ているように思える。
今、子どもたちを取り巻く食環境は大きく変わって来ているようだ。人間も含め、生き物にとって「食」は最も大切なもの。「食習慣」、普段それほど意識にはないだろうが、健康的に生命を維持するためには欠かせないものである
平成17年度からスタートした栄養教諭の資格。昨年の12月、栄養教諭の先生方が岐阜県多治見に集結する、年に一度開催される研究会「第7回 栄養教諭食育研究大会」に行って来た。全国各地区の栄養教諭の先生方が忙しい仕事の中、子どもたちに出す給食の献立メニューでの注意点や問題点を、エビデンスをもとに検証し具体的な事例を示しながらの発表である。「食」に関する有意義な情報共有の場であり、真剣そのものであった。子どもたちの口に入る食べ物を扱う、学校で活動している栄養教諭の先生方が「縁の下の力持ち。」だと大きく感じた素晴らしい大会であった。
日本は他国にはない完全給食制度というものが存在する。戦後は子どもの栄養補給が主であったが、今は食育の一環としても実施され、その意義は大きい。発表の中の一つで、1週間のうちの外食、中食*の回数が意外と多いことに驚かされた。少し前までのその回数はせいぜい月に1~2回くらいが平均だったと記憶している。しかし、6割以上の家庭が週に2~3回外食や中食をとっている事実を知った。アンケート結果や資料研究のデータがスクリーンに映し出され、とても説得力があった。共働きが普通になった現代は社会環境も大きく変わり、主婦が専業でご飯を用意するということが出来づらくなって来ているのかもしれない。またジェンダーフリーが叫ばれるこのごろ、「ご飯を作るのはお母さん」はもう古いのかもしれない。そのうち「お母さんの味」もなくなってしまうのだろうか。時間をかけて料理を作り、子どもたちに食べさせるようなことは、もう昔話になったのかもしれない。子どもは親の行動を見て知らず知らずのうちに同じ行動をする。「子は親の鏡」と昔から言う。なので、現代の子どもが親の世代になれば、その食習慣は継承されて行くであろう。考えてみれば動物(哺乳類)には「お母さんの味」はない。動物は自然から与えられた同じ食べ物を皆食べている。味付けもない。だから「お母さんの味」などない。
給食制度がいつまで続くのかわからないが、給食で出される味が「お母さんの味」に取って代わっていくのだろうか。給食の食材は地産地消が奨励され進んでいる。学校ごとにあった給食室はなくなり、地域給食センターができ、その地域の学校の給食を賄うようになっている。近い将来、給食を通じて子どもたちは「お母さんの味」からみんなが共通の「地域の味」に変わっていくのだろうか。少し寂しい気もする。
*中食とは、レストランなどでの食事「外食」と、家庭で素材から調理する手作りの食事「内食」(ないしょく)との中間の調理済食材や惣菜で手軽に済ます食事のこと。
お問い合わせ
CONTACT
TEL 03-3237-9801
10:00~17:00(土日祝祭日は除く)